「やれやれ、乗せてもらえて助かりました」青年はナップザックを背中から降ろして、
エアコンの効いたパトカーのハンドルを握っているモナハン保安官の隣の助手席に乗り込んだ。
「まさかパトカーをヒッチハイクしたからって、逮捕されたりはしないですよね?」
「今日はな」保安官が答えた。「それほど暇じゃないんだ」
青年はほっとしたように笑みを浮かべた。そしてナップザックからチョコレートバーを取り出すと、
それをパキンとふたつに割って、保安官に差し出した。
「いや、結構」アクセルを踏み込みながら、保安官が答えた。
「誰かを追跡でもしているんですか?」
「ついさっき、ファーストナショナル銀行が四人組の強盗に襲われてな。黒いセダンで逃走したんだ」
「えっ」ヒッチハイカーは驚いた。
「ほんの十分前に黒いセダンをみましたよ。それも四人の男が乗っていました。もう少しで轢かれるところでしたよ。
一時間も待って、ようやく通りかかった車だったのに。でも、その車は左に曲がって西に向かいましたよ。北じゃなくて」
それを聞いた保安官は急ブレーキをかけて、車をUターンさせた。
青年はオレンジの皮をむき始めたが、皮はきちんと紙袋に入れていた。
「今日は日陰でも摂氏三十度近くはあるだろう」
「そうでしょうね」ヒッチハイカーも頷いた。
「あれ、曲がり角を通り過ぎましたよ。どこに向かっているんです?」
「警察署さ」保安官がぶっきらぼうに答えた。
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